大切なソフトサイン

高等学校の先生から、貴重な質問がありました。

顧問をしている野球部の生徒ですが…英単語のテストがほぼ0点で、「なんで点数取られへんの?」と周りの部員が聞いた時に「単語を見ていく内に忘れるというかどこを見ていいかわからなくなるねん。」と言っていました。どんなアドバイス・声かけをしたら良いのか迷ってしまいました。どうしたらよいでしょうか?

まずは、この生徒が、高校生になって自分の困っているところを上手く説明できるところまで成長してきたことに感心しました。

本来ここまで困っていたら、小学校・中学校での学習において辛いことも多かったでしょうから、自己肯定感を削られ生きる力が弱っている可能性も高いからです。

「単語を見ていく内に忘れるというか、どこを見ていいかわからなくなるねん。」という彼のつぶやき(言葉)は大事なソフトサインであって、この生徒の困っているところを探っていく貴重なヒントを与えてくれています。

「見ていく内に忘れる」という点からは、短期記憶(ワーキングメモリー)の課題があるかもしれません。

人が何某かの作業をするためには、脳では与えられた情報(聞いたり、見たり)を短期記憶として保存し、その上で作業をイメージ(思考)し実行するという流れが必要です。

しかし、彼の場合「視覚」として英単語が記憶に残らないことになっているのだとすると、当然のことながら英単語のテストで点はとれません。

次に、「どこを見ていいかわからなくなるねん。」という点からは、眼球運動に何某かの課題があることも考えられます。

野球部ですから、ボールを見ることである程度鍛えられているとは思うのですが、人の運動発達において、体の真ん中を通っている正中線を越える動きは元来苦手なのです。

ですから、英語のような横文字を読もうとすると、眼球運動が苦手であれば、目が迷子になって読もうとしても読めないことが起こります。(※詳細は「北出勝也」先生の本などで、学んでいただければ大変うれしいです。Facebookではビジョンジョイさんで検索されるとお出会いできますよ。)

ハリウッドスターのトムクルーズ氏は字が読めないことで有名ですが、横文字圏の人たちに文字に苦手な人が多いと言われるのはそのような側面があるのだろうと推察します。

一方、日本語は小学校の国語の教科書を見てもわかるように、基本的に縦書きから指導されますので、文字の読み書きの苦手な人は少なくなる傾向があると考えます。

さて彼ですが、こんなに素直に貴重なヒントをくれたのですから、早急に各教育委員会と連携している専門機関において、WISCなどの検査をしていただくことが肝要です。

検査によって困っているところがより具体的にわかりますし、発達の凸凹も見えてくるはずです。

これだけ困っているのに、高校に入学できているということは、苦手な部分を何某かの自分のバイアスを使って乗り越えてきている逞しさもあるはずです。

生徒の何気ない会話の中で、ソフトサインに気づかれたこの先生の感性に感謝しつつ…

笑顔で 元気に 逞しく!

みんなで一緒に ステキなクラスを作りましょう!

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